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JAZZの似合う風景(Sam and VictorのVlog)

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 Sam and Victorというインフルエンサーの動画です。 まるで、このブログのテーマを映像化したようなVlogです。  この二人は、日本もお気に入りのようで日本各地を訪れて、おしゃれなトラベルVlogを投稿しています。

短編小説「創業家社長の追放」

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 加賀谷ホールディングスは、創業者・加賀谷正治が創業家の娘婿として事業を拡大し、一部上場企業へと育て上げた会社である。精密部品の製造を主力とし、堅実な経営で知られていた。しかし、その堅実さの裏返しとして、現場の声を吸い上げる“番頭”の存在が極めて大きい企業でもあった。  次の社長・加賀谷洋は、創業家の長男として大学卒業後に海外で経験を積み、五年前に帰国して社長に就任した。温厚な性格であるが、小さい頃から裕福な家庭で育ったせいか浮世離れしたところがあった。それが経営面での弱さとなり、会社の業績は何とか横ばいを這いつくばっていた。  正治は自分が亡くなる前に、専務・矢島義郎に教育係兼貢献になってもらう事を打診し、矢島も快く受け取った。高卒で入社し、叩き上げで工場長、事業部長を歴任した男だ。豪放磊落で口は悪いが面倒見がよく、「矢島のアニキ」と慕う社員も多い。だが、洋のコメンテータまがいの机上の判断に否がる事も少なく、取締役会でさえ洋の提案を「机上の空論だ」と切り捨てることもしばしばであった。そうしているうちに矢島は洋を見限るように、次第に会社の意思決定を自らの都合へとねじ曲げるようになった。  いつしか「専務の許可は取ったのか?」が社内の合言葉のようになり、社長への報告は専務を経由するのが当然となった。時には、社長に知らせぬまま取締役会の決議が進むことすらあった。稟議書には社長の印の前に専務の巨大な捺印が押され、社長が「もう少し検討を」と言えば、矢島は「洋の考えは甘すぎる」と笑い飛ばした。  就任当初こそ創業者を慕う腹心たちで構成されていた取締役会も、年度が変わるごとに矢島は自らの子飼いを次々と役員候補に推薦し、創業期からの役員たちは退任に追い込まれていった。いつしか会議で洋が発言しても賛同の声は弱く、最終的には矢島の案が“全会一致”で通るようになった。  ある夜、洋は父・正治の旧書斎に一人座っていた。壁には創業期の写真が飾られ、若き日の父と、壮年の矢島が肩を並べて写っている。矢島は、父にとって豊臣秀吉のような番頭であった。  正治は創業家の一人娘の婿として迎えられ、東京の名門国立大学機械工学科を卒業後、三菱重工で十数年設計エンジニアとして活躍していた。縁談は教授からの相談であり、会社を飛躍させるには技術力の向上と国立大学との共同研究が必要と考えられたためだった。  一方...

短編小説 寂寥(3回) 南国の楽園

  ノートの最初の方には、彼の華々しい記録が残っている。ノートに はたどたどしい言葉でかいているが、それを小説家に渡してリメイ クすれば、間違いなく映画化してもおかしくないほどの代物だ。  住人は日記の中で、普通の人では体験できないような、まるで映画 のワンシーンのような青春を送っていたようだ。管理人は、 その後住、悪臭漂う住人の部屋で興味津々と日記を読み始めた。 日記には、真夏の南国の出来事がつづられていた。場所は東南アジ アのとあるビーチ。その日は、炎天下の続く夏の日だった。 住人は、ホテル備え付けのプールのデッキチェアーに寝そべってい た。昨日はナイトクラブで朝まで酒を飲みまくって騒いだ。二日酔 いでクラクラする。涼しげな波の音と頭痛が交互に襲うような気分 だ。しかし、気が付くと9時なので朝食を食べにレストランに向か う。昨日の酔いを醒ますかのようにマンゴーの入ったトロピカルジ ュースを飲み干す。少し酔いが醒めてくるのと同時に朝の涼しさを 感じた。すると今度は生暖かい風が彼をいちめんにまとわりつく、 これこそ南国ならではの爽快さである。トーストをかじりながら、 昨夜のことを思い出そうとする。しかし、思い出すことができない 。余程吞み潰していたのであろうか。そうしていると事業仲間のチ ャンがやってきた。昨夜の自分の態度に少し怒っているようだ。で も思い出せない事は思い出せない。日記に張り付けられたチャンの 写真を見ると、遊び人風であるがなかなかの好男子であった。二人 は仕事仲間であり、悪友達でもあった。夜な夜な南国の酒場で羽目 を外していたことが日記から伺える。そばにある写真を見渡すとそ の写真に一緒に写っている女性はたくさんあり、 それらを数えていくと数十人は優に超えていた。その頃の住人は映 画俳優を思わせるほどの容姿であった。日記にはこれらは女性から 口どかれたと書かれている。住人の写真を見る限り、 それはまんざら誇張でなさそうだ。しかも、写真に写っている女性 は一定レベル以上の美貌の持ち主でもあった。住人と女性の移った 写真は広告に掲載されているような理想的な男女像のモデルと変わ らなかった。それだけでない写真の写り方から一定以上の関係をも っていたような写真も少なくない。これでは現世での極楽浄土では ないと管理人は興奮した。住人は妄想の世界のよう...

短編小節 隣の芝生

  彼は平凡な二流大学を卒業し、二流の会社に就職した。人一倍正義感が強く、何事にも真面目に取り組む。しかし、皮肉にも結果が伴わない。その実直さゆえに、彼は結果の出ない自分を過剰に責め、自己評価をどん底まで落としていた。客観的に見れば、彼は決して無能ではない。見方によっては世間一般の「中からやや上」に位置するだろう。しかし、彼は絶対的な自己価値を認められず、常に他人と比較しては、エリート層や成功者、自分より先に出世した同僚を羨んでは「自分は最低だ」という劣等感に苛まれていた。  「自分ばかりが貧乏くじを引いている」そんな思考はいつしか負け意識と不安の塊となり、彼の心を蝕んだ。全てを否定的に捉える「うつ状態」に陥った彼はある日、絶望の淵を彷徨うように公園の小さな森を歩いていた。池の水面に映る、不機嫌な自分の顔。その背後に、いつの間にか仙人のような老人が立っていた。「君の悩みを解決してあげよう。君のエネルギーを三段階上げてやろう」老人がそう告げた瞬間、景色が歪んだ。 第一の試練:富  気がつくと、三年の月日が流れていた。彼はネットビジネスで成功を収めた富裕層になっていた。 周囲にはポジティブな成功者ばかりが集まり、かつての友人のような愚痴や悪口を言う者はいない。だが、そこは安息の地ではなかった。慢心すれば競合に追い抜かれ、一瞬の油断が転落に繋がる。経営の重圧に心は休まる暇もなく、そのストレスを埋めるために月百万円の愛人を囲い、豪華な旅行を繰り返したが、虚しさは募るばかりだった。 タワーマンションの自室に帰っても、妻とは仮面夫婦。心の通わない「すました生活」があるだけだ。世間からは夢のような生活に見えるだろうが、実態は孤独な砂漠を一人歩いているのと変わらなかった。 第二の試練:名誉  次に彼は、会社の出世頭となっていた。だが、そこはアスリートのような仕事量と努力を強いられる修羅場だった。三百六十五日、ライバルを蹴落とすことだけを考え、脱落する恐怖に怯える日々。 その予感は最悪の形で当たった。次期役員に選ばれたのは、彼より能力の低い、専務の「太鼓持ち」だった。情実人事という社内政治の敗北。彼は不条理な世の仕組みを叩きつけられ、無能な上役の部下となった末に、子会社へ放出された。役員待遇とはいえ、魂が抜けたような抜け殻の人生だった。 第三の試練:愛  最後に、彼はスポーツ...

人生最後の夢(短編小説)

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 彼の命は、残された数日を静かに刻んでいた。病室のベッドに横たわりながら、彼の脳裏には、これまでの人生の移ろいが次々と浮かんでは消えていった。小学校で勉強に励み、努力を重ねて一流大学に進学。卒業後は名の知れた大企業に入社し、役員にまで昇進した。すべてが順風満帆だった。しかし、数年前に妻を亡くし、子どももいない。親戚もほとんどおらず、晩年は孤独な日々を過ごしていた。そして今、自分自身もこの世を去ろうとしている。  彼は、自らの人生がまるで一片の花のように儚く、美しく、そして散っていくものだと感じていた。「とうとう自分も土に還るのか」——そんな思いが胸をよぎる。どれほど努力して築いたものも、あの時の感情も、すべては移ろいゆく。人生の無常を痛感しながら、彼の心にはただ、お釈迦様の言葉だけが深く染み入っていた。  彼は、人生最後の夢を見ていた。そこには、部長になりたての自分がいた。あの頃は仕事に情熱を注ぎ、事業部長を目指してライバルと競い合い、小さな派閥を築いては一国一城の主のように振る舞っていた。自分に逆らう部下には容赦なく人事の鉄槌を下し、ライバルを蹴落とすように仕向けていた。夢の中で彼は、そんな部長時代の最も醜い自分にタイムスリップしていた。今思えば、あの時に鉄拳を加えた部下や、敵視していたライバルの方が、正しかったのかもしれない。彼は、ただ階段を一段でも上り、他人より優位に立つことだけを生きがいとしていた。しかし、出世の限界が見え始め、出向の話が現実味を帯びてきた頃、かつての情熱に満ちた会社の姿は、どこか遠いものに変わっていた。後輩たちがかつての自分のように、意地悪く出世競争に邁進する姿を見ると、恥ずかしさが込み上げてきた。そんなある日、彼が嫌っていた部下が仕事の相談に訪れた。彼は怒りをぶつけ、その数ヶ月後にその部下を関連会社へ出向させた。しかし今の彼は、その部下に優しく接し、出向も取り消したいと思っていた。それでも、口は気持ちに反して怒りの言葉を吐いてしまう。  過去は変えられない——その瞬間、彼は病室の自分に戻っていた。そういえば、会社の同僚ともここ数年会っていない。年賀状も、かつては数百枚やり取りしていたが、今では十数枚にまで減っていた。一年前、会社の前を通ったとき、出てきた社員は誰も知らない顔だった。一人は役職者で、もう一人はその部下らしい。社会人ら...

人生のいたずら(学歴編)(短編小説)

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 鈴木亮平が東京大学の赤門をくぐった日、彼の未来は輝かしい光で満ちているように思えた。地方の小さな町工場で働く両親のもと、ただひたすら勉強に打ち込み、手に入れた最高の学歴。卒業後、日本を代表する大手総合電機メーカー「帝光電機」に入社した時、亮平は自分がこの国の産業を動かすエリートの一員になったのだと確信していた。 社会人5年目、高校大学時代の友人の集まりで、亮平は田中健太と再会した。日本大学出身の健太は、裕福な家庭に育ったお坊ちゃんという印象しかなかった。 「健太は今、何してるんだ?」 ハイボールのグラスを傾けながら、亮平は聞いた。その口調には、国内最大手のメーカーで働く者としての自負が滲んでいた。 「小さな中小企業だよ。太田精機。相変わらず、ちまちま部品作ってる。君の会社からも厳しい納期と品質の要求を突き付けられ、昨日は徹夜でなんとか納品にまで漕ぎつけたんだ」 健太はあっけらかんと笑った。精密部品を作る町工場。亮平の頭には、油の匂いが染みついた薄暗い作業場のイメージが浮かんだ。 「俺は今、東南アジア向けの白物家電の開発チームにいるんだ。年間数百万台を売るビジネスだから、責任も大きいよ」 亮平がそう語ると、周りの友人たちは「さすが東大卒は違うな」と感嘆の声を上げた。その賞賛の輪の中心で、亮平は優越感に浸っていた。健太は、そんな亮平を黙って見て、楽しそうに笑っているだけだった。亮平にはそれが、自分の土俵で勝負できない者の負け惜しみに見えた。 それから20年の歳月が流れた。世界は、亮平が想像していたよりも遥かに早いスピードで姿を変えていた。 帝光電機という巨大な船は、時代の荒波の中でゆっくりと傾き始めていた。かつて世界を席巻したテレビやオーディオ事業は、新興国メーカーとの価格競争に敗れ、見る影もない。亮平が心血を注いだ家電部門も、IoTやAIといった新しい波に乗り遅れ、大規模なリストラの対象となった。 亮平自身も、希望していなかった子会社への出向を命じられた。給料は下がり、仕事はかつての栄光を知る者にとっては屈辱的なルーティンワークばかり。社内には諦めの空気が漂い、優秀な同期は外資系コンサルや新興のIT企業へと次々に去っていった。自分が信じてきた「安定」という名の船は、ただ沈没を待つだけの泥舟に変わり果てていた。 そんなある日、亮平は高校の同級会で健太に久しぶり...

独身男のタイムスリップ恋愛(短編小説)

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 健太、三十歳、独身。システム開発会社で働く、ごく平凡なサラリーマンだ。平凡と言えば聞こえはいいが、その実態は、女性との縁が全くない「モテない男」そのものだった。会社の飲み会では、女性社員の輪に入れず、壁際でハイボールの氷を意味もなくかき混ぜるのが定位置。勇気を振り絞って話しかけても、「あ、はい」「そうなんですね」という短い相槌のあと、会話は静かに終わりを告げる。女性たちが向ける笑顔は、愛想笑いか、あるいは憐れみのそれ。健太は、自分が彼女たちの世界の「背景」でしかないことを、痛いほど理解していた。 ある週末、健太は気分転換に浅草を訪れた。そこで、古道具屋の軒先に置かれた一つの懐中時計に目が留まった。店主の老人が「面白いものだろう。大正時代の職人の作だよ」と声をかけてくる。健太は、ほんの少しの高揚感を覚え、それを購入した。 アパートに帰り、早速懐中時計をいじってみる。突然、時計がカッとまばゆい光を放った。同時に強烈なめまいに襲われ、健太の意識は闇に吸い込まれた。  目覚めた時、健太は知らない路地裏に倒れていた。体を起こして周囲を見渡すと、景色は一変していた。アスファルトの道はなく、土がむき出しの地面。行き交う人々は、着物や袴を身につけ、男は皆、帽子をかぶっている。遠くからは、路面電車がチンチンと鳴らす警笛と、威勢のいい呼び声が聞こえてくる。  呆然と立ち尽くす健太の前に、荷車を引いた男が通りかかった。「にいさん、道端で寝てちゃ危ねえぜ」。その言葉も、服装も、町の匂いも、全てが現実だと告げていた。どうやら、本当に過去に来てしまったらしい。時計の文字盤は、大正十二年を指していた。 途方に暮れた健太は、腹の虫を鳴らしながらとぼとぼと歩き続けた。そんな彼に声をかけたのは、一軒の八百屋の店先で大根を並べていた娘だった。 「あの…もしよかったら、これどうぞ」。 そう言って、ふかしたての薩摩芋を差し出してくれた。お千代と名乗ったその娘は、日に焼けた健康的な頬と、一点の曇りもない澄んだ瞳を持っていた。  健太は事情を話すわけにもいかず、「旅の途中で無一文になってしまった」と嘘をついた。お千代の父親である店主の清兵衛は、健太の人の良さそうな顔を見て、「行く当てがないなら、うちで働きな」と、住み込みで働くことを許してくれた。  それから、健太の人生は一変した。現代の女性を前にする...

短編小説 戦国時代へのタイムスリップ

 新幹線の心地よい揺れに身を任せ、彼はうとうとしていた。まどろみの中で意識が遠のき、やがて目を開けると、車窓の外の風景は一変していた。見慣れぬ田園風景、遠くに見えるのは時代劇でしか見たことのないような城下町。道行く人々は同じ日本語を話すものの、その言葉遣いは古めかしい。まさか、自分は過去にタイムスリップしたのか――そんな疑念が頭をよぎったが、どうやらそれは現実らしい。 一体、ここはいつの時代なのか。彼は道行く町人に、この地の殿様を尋ねた。町人はぶっきらぼうに「家康様よ」と答える。どうやら、ここは戦国時代、それも徳川家康が治める三河の地らしい。これは夢だ、そう思って自分の足を棒で叩いてみたが、鈍い痛みが走る。夢ではない。何が起こったのか。呆然と街を歩く彼の奇妙な服装に、人々は好奇の目を向けてざわついた。 その日の宿もなく、手持ちの金もない。彼は困り果て、ふと手元の万年筆とノートを売ることを思いついた。立派な店構えの問屋に入ると、店の主人は彼の格好に訝しげな視線を投げかけた。しかし、彼が万年筆を取り出し、さらさらとノートに「山」という文字を書いて見せると、主人の顔色が変わった。「これは一体、どこから仕入れたものだ? 南蛮品でもこれほど上等な物はないぞ!」 主人は小判を一枚差し出し、「これでどうかね?」と持ちかけたが、彼は首を振って立ち去ろうとした。よほど欲しかったのだろう、主人は慌てて小判を五枚に増やして差し出す。その申し出を受け、万年筆とノートを差し出そうとすると、主人はさらに彼の持っていたバッグまで欲しがった。そして追加で小判十枚を提示する。目の前の小判十五枚は、当面の生活資金としては十分すぎる額だった。彼はその場で商談を成立させ、懐に小判を忍ばせると、すぐさま近くの店で時代に合った着物を購入し、三河の街へと溶け込んでいった。 未来からの「予言者」 宿に滞在していると、奇妙な噂を聞きつけた侍が彼を捕らえにやってきた。不審人物として牢に入れられた彼だが、その「変な噂」に興味を抱いた家康が、彼との対面を望んだ。「お前はどこから来たのだ?」と家康が問うと、彼は未来から来たと答えた。「ならば、これから起こる未来を申してみよ」と家康は迫る。 彼は意を決して言った。「信長様は近いうちに美濃を平定し、その地を岐阜と名付けます。」 「では、将軍公はどうなる?」と家康が問う。...

短編小説 1993年海外旅行での「バラと酒」の日々

1993 年バブル崩壊による経済停滞の中でも、時代はバブルの余韻に包まれていた。この時の自己テーマは「バラと酒」の日々、それは古い映画のような言葉だが、お酒は全てを心地よくした。そしてバラを求め南国に赴く、海外に出向けば日本円の強さに圧倒される。東南アジアいけば、現地人の価格は 1/5 ~ 1/10 でしかない。とにかく何でも安すぎるのだ。なので、ちょっとした高級感の溢れる南国風のホテルに宿泊し豪華なひとときにひたる。そして、シャワーを浴びたあとの濡れた髪をそのままにし、風光明媚な風景を眺めなから朝だというのにビールを飲む。国際経済チャンネルからはアジアのマーケット情報が流れてくる。窓を開けベランダに立つと早朝なのに熱風が吹き込む。それがなんとも心地よくいとおしい。まさに、天国に一番近いところというのはまさにこのような事を指すのであろう。極上の気分に包まれている。とはいっても、若さは熱いエネルギーを欲しがるものだ。あり余る体力を武器に思いっきり遊びたくなる。楽しんで楽しみ抜いてエネルギー消耗のために無駄な時間を費やすことになる。さっそく、ビーチをぐるりと散歩し爽快な気分になった後、ビーチ沿いのテラスでホテルバイキングをゆっくりと堪能する。それが終わるとリラックスマッサージを1時間半ほど堪能する。昼食を軽めに済ませ、ビーチパラソルでゆったりうたた寝。そしてインターネットで調査作業を夕方まで行い、夜は夕食をかねてバー・レストランのパーティーで一日疲れを発散。そして力尽くまででナイトクラブで遊びきる。そんな生活を 2 か月程度つづけ、それが飽きたら中国~ベトナム~タイ~マレーシアなどをぶらり旅で 3 か月。夜はナイトパーティー、ダンスホール。すべてが嘘のような幸せの時間だった。とにかく、若いエネルギーとは、喧騒と猥雑を追い求め、そこに自分を見出して多くの精力を費やすものだ。  

 短編小説 寂寥(2回) 幸せの意味を問う

  管理人は、彼が以前住んでいた街に赴いて 、 その邸宅を見に行った。閑静な住宅街の一角にその邸宅はあり、社会的にある程度の成功を得なければ住めるような場所ではなかった。そして、写真と同じたたずまいの邸宅は、 写真の刻印は確か25年前であったが、今もって 外観もリフォームされ て立派な豪邸の佇まいを残している。玄関口から品のよさそうな女性が出てきた。そして庭の花に水を与えていた。しかし、それは写真での彼の妻らしき人ではない。どうも、 別の家族が住んでいるようだ。写真には、庭にブランコがあって彼の子供と妻が楽しく遊んでいる様子が描かれていた。そんな子供たちも今は大きくなっているのであろう。  日記と思しきノートを読んでいくと、彼の人生の中ではちょうどこの頃が最も幸せだったように思われてならない。日記から読み取れる言葉の一つ一つに幸せがにじみ出ているようだった。彼は、そこから転落の人生を歩むのだが、彼の心の中には、この邸宅の幸せなひと時が、彼に人生において心の中の映像として暮らしているように思えてならなかった。だから、それ以降の人生は、いわばそういった楽しい時期の思い出に包まれながら様々な苦難を耐え忍んでいたのであろう。鏡で見る自分は往年の好男子ではない。今は枯れた醜い初老の風貌だ。しかし、心の中での彼は、邸宅にたたずんでいた頃の彼なのだ。この住人が人生前半の幸福や悪事を、この邸宅の幸せな人生を起点として、人生後半には償うようにして全てが逆回転していき、人生のプラスマイナスを相殺して亡くなった。それでも何のくいを残す素振りもない。管理人は、そんな彼のノートの読み解くうちに、幸せの意味を自分に問いただした。本当の幸せとは、その人に人生にとって、暖かく囲ってくれる妖精のようなものだと。   人生にさしたるプラスマイナスもなく、本当の幸せを感じることがなく、今もって年甲斐もなく煩悩に苛まれている自分との違いに言葉を出すことすらできなかった。

短編小説 寂寥part1 アパート住人の日記

  築 70 年の老朽化したアパートの前に管理人と工事業者が何やら話し込んでいる。最後の住人がお亡くなりになられた。ようやくやくこのアパートの取り壊しが出来るようになった。この住人は6か月先の家賃まで管理人に振り込んでいた。管理人はこの住人の親族である保証人に連絡をとったが音信不通。そこで保証人が住んでいる家にむかったところ空き地になっていた。親族は役場に問い合わせたら保証人は10年前にお亡くなりになったとのこと。どうも住人には頼るべき身寄りはなさそうだ。これでは、管理人が特別縁故者になるしかなく、半分嫌な気持ちで遺品整理をはじめた。 そこには、若かりし頃の写真と日記が散らばっていた。まるで俳優と女優に見間違えるくらいハンサムな男性と美人が写っている。華やかな若かりし頃が想像された。管理人はそれを見てため息をついた。 その写真の背景には大邸宅が写っている。さぞかし優雅な暮らしをしていたことが想像できる。事業などで羽振りが良かったのか写真を見る限り。随分立派な家に住んでいたようだ。さらに立派な邸宅を背景に美しい妻と子供らしき人物が写っている。誰もが羨むのような人生だ。そして、その脇には日記と思しきノートが10冊あった。しかし、写真をめくっていけば行くほど、この住人の顔に品性が失われ、ドヤ顔に変わっていく。背景も次第にみすぼらしくなっていく。その終着点がこの老朽化したアパート。晩年はこういうアパートで迎えることになったかもしれないが。この人は、一般の人より幸せな人生を送っていた。一体彼に何があったのだろうか。なぜ、ここまで落ちぶれたのか。管理人は、そんな住人の人生になんかしら興味を抱くようになった。管理人は、彼の事をもっと知りたくなった。遺品整理には時間がかかるので、もう少し時間を頂けないかと工事業者に伝え、工事の延期をお願いし、工事業者は遅延金をいただくことで渋々了承した。管理人はこの住人の日記を自分の部屋に持ち帰って夜通しで日記を読み始めた。

短編小説 高校球児の50年前のタイムスリップ

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彼は 高校野球選手。高校 3 年の夏。彼の高校は、なんとか甲子園に出場した。しかし、第 1 戦は、古豪で勝ち目がない、彼ら部員は、甲子園に出場したことが人生のメダルと思って試合に臨んでいた。そして、悔いのない試合をしようと宿泊先の旅館で誓いあった。次の朝、彼は眼を凝らした。同じ旅館なのに人々はみな昔の人になっている。なんと 50 年前にタイムスリップしていた。当日の相手は同じ古豪。優勝候補。しかし、彼は。古豪をノーヒットノーランに収め、時の人になった。彼のチームは優勝をつかみ。ドラフト 1 位でプロに。プロでもスターになる。あの夢のような大打者に対しても三振の山を築いた。そして、私生活を含め夢のような生活を送るが、ある時、目がさめるとタイムスリップ前に戻っていた。そして古豪に負けて1回戦であえなく甲子園を去り、その後野球を引退し、小さな会社の電気工事士になっている自分がいた。あるとき彼は、野球年鑑にタイムスリップした自分の記事があった。あれは夢ではなかったんだとかれは思った。そこには、突如消えた幻の名投手。火の玉のような剛速球であのxxさえ打ち崩すことができなかった。そして関係者のコメントは、彼は不出世の名投手。彼以上の剛速球を投げれる人は、今後二度と表れないだろうと。。。。。。。。。  そして、彼は時のいたずらを翻弄されるかのように古い日本の風景を追い求めて東南アジアに行くことを決めた。

クアラルンプールの日常(小説)

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  彼は、 1997年の初頭に東南アジアに住むことを決意する。場所はクアラルンプールで外資系の東南アジア現地法人のSE職に就くことにした。普段はソフトウエア会社でERP設計をしている。マンションは、プールとジム付き そして部屋はホテルのようなレイアウト。とても気持ちが良い。東京で同じ間取りを借りたら優に30万以上するが、クアラルンプールでは5分の1強の値段で借りることができる。まさに天国のような時間だ。彼は、そんなマンションに設置してある誰もいないプールを眺めるのが好きで、暇なときはそれを眺めながら投資業務に勤しんでいる。しかし、日経が余りにも安定しているので、もっぱら相場の勉強というところである。フィナンシャルタイムズとインターネットを駆使して様々な調査を行っている。そして、東京では到底味わえない時間の流れを楽しみながら。    ( クアラルンプールの一日 )   彼の朝は早い。朝 4 時から 5 時に目を覚ます。そして、 1 時間程度、浴槽でうたた寝を兼ねながらゆっくり浸かる。そして、インターネット米国マーケットの結果を眺めながら朝食の準備。大抵はパンとスクランブルエッグ、ミルク、そしてコーンフレーク、バナナ、スープ。そして最後にコーヒーを楽しむ。  これだけで 1 時間は立つ。あっという間に 7 時過ぎになって、ラジオ体操や出勤の準備し、 7 時 30 分頃には家を出る。  仕事場での公用語は英語。いつの間にか日本語を忘れそうなくらいに仕事では、日本語を使わなくなる。仕事時間は、日本と違い大抵は定時に帰社する。帰社後は週 2 でクアラルンプールの街に繰り出すが、それ以外は行きつけの店で、夕焼けを眺めながら残りは、まっすぐコンドミニアムに直行。  コンドミニアムに戻ると、彼はクアラルンプールの夜景を眺めながら、時にはアルコール、時には コーヒー をのみながら自分の趣味に没頭する。この時間がなんとも愛おしい。夜になるとクアラルンプールの夜景を一望することができる。東京とは違ったクアラルンプールの夜景を楽しむ。彼はパソコンで米国の相場を眺めながら、ちょっとしたアルコールかコーヒーを飲みながら夜景をバックに物思いにふける。気が付くと夜中 2時を回っている。こんな生活がなんとも愛おしい。  クアラルンプールの街に繰り出すときは、行き...