嫉妬(1962年)
この作品は、映画というよりも、むしろ2時間枠の単発サスペンスドラマのような、コンパクトで手堅い構成を感じさせます。
作品の背景には渋いジャズが流れ、その音楽が醸し出すワイルドな雰囲気に、制作された時代の空気が色濃く反映されています。映画はその時代の気分を映し出す鏡ですが、登場人物に目を向けると、この点が顕著です。劇中の朝子のような女性像は、現代においては絶滅危惧種」とも言えるほど古風に感じられます。むしろ、同じ時代に描かれたとしても、大空真弓演じる妹の友子のようなキャラクターの方が、現代の女性像に近いと言えるでしょう。
物語の展開は、謎解きの定石を裏切る構成となっており、安易なハッピーエンドで終わらせていません。さらに、その裏側には一人の男をめぐっても姉に対する妹の嫉妬が隠れています。ストーリーの焦点が多面的な要素を盛り込んでいます。
商業的な成功よりも芸術的な挑戦を優先した、意欲的な作品と評価できます。
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