「スローなブギにしてくれ」 ~バブル前の退廃的バラック生活の情景
「スローなブギにしてくれ」はこれまで名前だけは知っていたが観たことがなかった。強いていえば、同名タイトルの主題歌がいい味を出しているので、その当時としては最先端を行くおしゃれな映画かと思っていた。 この映画、Youtubeに投稿されていいたので見てみた。 (感想) この映画のロケ地と思われる福生には、朝鮮戦争を契機に米軍向けに提供した平家の簡易アパートが数多くあり、横田基地も近いことからちょっとした米国を味わえる場所でもあった。 しかし、80年になると老朽化も相まって、バラック的な色彩も帯びていた。ちょっと古びたバラックアパート。これがアパート初期の提供時の昭和20年代後半か30年代なら相当おしゃれな物件であったのは間違いない。 この映画のみどころは、バブル前の日本のバラックな風景、それは戦後の焼け野原からつづく日本の風景でもある。そういった人々の情景が余すことなく映し出されている。 こういったバラックのような家は、バブルを境に都市の再開発の名目のもと消えていく。バブル以降、日本は失われた30年と言われるが、日本人は間違いなくバブル前に比べたらずっと豊かになっている。あるのは、あの頃と比べ人々の心が不安に満ちた社会になったことだけだ。 逆に今の30代以下の人から見ると、新鮮な光景に映るのではないか。 1981年にこの映画はクランクインされた。日本はこの先、バブル経済に突入する。音楽では山下達郎や大瀧詠一が、おしゃれで洗練された街並みを舞台にした人々の生活を描いていた。そういった情景は90年代になると現実化する。 そう考えると、この映画は70年代までの日本人のちょっとした粋な生活情景を色濃くくみ取った作品でもある。