(ドラマ/映画であの時代にgo!)戦前の憧れの大学生活:大学の若旦那

 若大将シリーズのモデルになったなかなか面白い映画です。主人公は、その頃の大学の花形スポーツである慶応の元日本代表ラガーマンをそのまま映画の中で等身大に描いています。若大将シリーズとの共通点は スポーツ万能の大学生、イケメン(女性にもてる)、(裕福な)商人の息子、厳しい頑固な父親、優しい兄貴思いの妹などです。

 


 

〇戦前の大学生を垣間見る。

 強烈な格差社会であった戦前。大学生はまさに選ばれし名家の子女が通う場所です。今の間隔でいえば、私立医学部のような感じでしょう。普通の家庭では高いハードルがあります。そういった意味では、その頃の大学生にはある種の富裕層感が漂っています。大学の価値は、一般大衆化した現在とは雲泥の差です。その大学生でも、花形スポーツのエリートスラッガーとなればモテないわけがありません。ある意味、雲の上の存在です。しかし、これは映画の設定ではなく、主人公の経歴そのものです。なんともうらやましい限りです。 




〇戦前の雰囲気を堪能

昭和初期なら男は洋服、女性は和洋折衷といったところですが、この映画では、若旦那は醤油問屋の長男で学生服以外は袴を着ています。従業員も同様です。芸者などは常に着物姿です。町の男性も袴姿がほとんどです。他の映画を見る限り、昭和初期の東京の人々はもっと洋服を着こなし、生活様式もモダンな雰囲気を映し出していますが、醬油問屋という職業柄の影響もあるが、この映画はまるで明治時代にでもタイムスリップしたようなこの当時としても時代を遡った感のある映像をこの監督は意図的に作り上げたとようにも感じてしまう。

 


〇戦前の花形スポーツ事情

 戦前までは、プロ(職業)チームよりも6大学野球の早慶戦などが相当な人気で、おそくですが選手たちもプロ並みに有名人でスターでした。ラグビーも同様の扱いだったことでしょう。そして、戦前のような情報が少ない時代に、対抗戦がラジオ放送され、新聞にも掲載されるとなればその人にとって名誉でしかありません。そんな名門チームだからこそ男女交際への厳しく禁じ、名門ラグビー部は紳士たれと言わんばかりの規律を強いたのでしょう。映画だけの誇張ではなく、そんなエリート意識は現実の世界でもそうだったのです。

 


〇戦前の遊び人の恋愛事情

 この若旦那はモテモテですが、この頃の大学は男子校ですから、キャンパス内に女性はいません。そのため、恋愛対象は学外となりますが、女子大の数も限られていたので、必然的にその対象が、芸者だったり、レビューガール(今でいう歌劇団)だったりといういわば玄人に向かいます。でも、昭和初期はカフェも多くあったので、カフェの女中さんを題材にしても良かったのではと思いますが、金持ちのドラ息子は敷居の高い芸者の方が似合うということなのでしょうか。

まあ~、一般的に良家の女性は、親が決めた見合い結婚がほとんどだったので、自由恋愛はご法度。一歩間違えば親から勘当をくらうくらいの危険な行為だったのです。

とは言っても、芸者遊びというのもある程度の金持ちだけに許された遊びですが。。。。。。




歴史教科書では、昭和大恐慌の傷跡が癒えなかったこの時代、男子は丁稚奉公、女性は工場や歓楽街への身売りが横行していたと書かれています。そう考えるとこの映画の能天気さはどこから来るのでしょう?

格差社会というのは残酷です。近くに遊郭や芸者が点在している世界というのは、本当のところは勝ち組が陶酔するパラダイスにしかすぎません。。。

 これが若大将シリーズになると、恋愛対象は一般の女性に限られ、遊郭などの玄人女性の影はありません。若大将シリーズは高度成長期の学生から見たら良家の夢物語にすぎませんが。大学の若旦那も同程度の夢物語。それでも、わずか30年で恋愛事情がこれだけ大きく変わったのは革命的なことかもしれません。

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