(音楽)Love&Peaceを味わおう(Shaved Fish)  ジョン・レノン

  私は、1975年に発売された「Shaved Fish」が大好きです。理由は、単なるベストアルバムではなく彼の人生と紐づけたコンセプトアルバムとなっていることと、どの作品ものけたたましい程のエネルギーに満ちているからです。

1.テーマは「Love&Peace

 今となっては何の変哲もないのですが、当時は西欧と言っても保守的な考えを持つ人も多かったので、音楽界の貴公子がヨーコにそそのかされて訳の分からない音楽を作っていると思った人も少なくなかったようです。

 実際、彼の政治的な要素のある哲学的な作風と情念で訴えかける歌唱法は70年代には少し早すぎたようで、レコードセールスもあまり振るわなかったようです。

 それでも、「Love&Peace」のエバーグリーンなテーマはそういった人たちの政党、米国でいえば民主党の政治の理念との整合性と相まって、革命者的なカリスマなイメージが彼に付きまとうようになり、普通のミュージシャンと一線を画するようになります。そうした評価が楽曲の再評価につながり、偉人として扱われるまでに高められます。

2.アウトローであり、知的な大人のロック

 これは私自身の感想でもありますが、学生時代はポールの楽曲のほうが聴き易く、ポップなメロディなのでそちらを好んでいました。しかし、社会人になって、ポピュラーミュージックを聴くのに飽きてくると、ジョンの作品は政治、人生思想をベースに知的でかつアウトローなロックを展開していくワイルドなカッコ良さがある事に気が付きます。それでも、ジョンの作品はある一定の年齢にならないと分からないほど知的な深みがあるので、私自身が理解しきれていない部分が今時点ですら多分にあります。なので、10年後に聞いたら更なる新しい発見があるかもしれません。

3.アルバム収録曲

 このアルバムは、「Give peace a chance で始まり、「Give peace a chance」でおわるコンセプトアルバムに仕立てています。

 A面は、アウトロー満載の知的でエネルギッシュなロックンロールが並んでいます。

 Give peace a chance:この曲は、このアルバムのイントロダクションとして1分弱に短縮されています。サビのフレーズを除けばメロディーらしいものはありません。その当時のビートルズは、アビーロードでB面の秀逸なメドレー、レットイットビーで不出世なバラード佳曲をポール中心に発表していました。つまり、この曲はビートルズと対極の作品であり、当時の人たちにはこの作品の本当の価値を理解できなった可能性があります。21世紀になると世界の音楽シーンはラップのように社会への批判的な歌詞とリズムが中心とした語りのような楽曲が台頭すします。そして、この作品も再評価されます。

Cold Turkey:ヘロイン中毒の禁断症状の体験をテーマにしたもので、その苦しさを激しいロックビートと金切り声と叫びで表現をしています。

Instant Karma:まさにこれも大人のロック魂さく裂で、人々の人生にのしかかるカルマなんてたいしたことはないと叫びまくります。

Power to the people:政治的なデモ行進が似合うようなエキサイティングなロック。「Give peace a chance」をよりエネルギッシュにしたともいえるアウトローな大人のロックです。 

Mother:強面なジョンが、実はマザーコンプレックスであったことを赤裸々に歌いあげます。感情を振り絞ってその悲しみを歌い上げる姿は、まさに大人のロックンローらの面目躍如です。

Woman of the nigger world:Niggerslaveと過激な表現で女性の置かれている現状と女性の地位向上の必要性を訴えています。まさにこれも反体制的な大人の知的ロックンローラーの面目躍如です。

 A面を聴き終わる頃にはジョンが持つロックンローラーとしてのエネルギーに圧倒されてしまいます。

B面では、彼がアウトローなロックンローラーだけでなく、20世紀を代表する稀代のメロディーメーカである事を見せつけてきます。

Imagine:説明するまでもない彼の最高傑作です

Whatever gets you thru the night:ビルボードで初めて一位を獲得した作品。ジョンの数少ないポップな佳曲

Mind Games:「Imagine」の後継と言われる作品。メロディもオリジナル力が豊かな秀逸な傑作。

No9 Dreams:彼のメロディーメーカの才能を如何なく発揮した名作。天才の一言

Happy XmasGive peace a chance:ここで「Love&Peace」を歌い上げ、A面に回帰していきます。そして「Give peace a chance」でリプライズします。しかし「Give peace a chance」ではまさに大人のロックンローラーのアレンジにして、このアルバムのコンセプトアルバムに昇華させています。



4.聴き終わって

 こうして聴いていくと、「プリーズプリーズミー」「シーラブズユー」「ストロベリーフィールズフォーエバー」を作った人とは同一の人物とは思えないほど異なる路線の作品を書き上げていることがわかります。これが彼の凄さと言えば凄さです。

 ただ、強烈な個性をもっている作品が多いので、常時聞くことは難しいのですが。楽曲の質の高さから定期的に聞きたくなる作品群でもあります。

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