(音楽で旅を味わう)ニューヨークの哀愁を味わう ストレンジャー

 ビリー・ジョエルといえば、古き良きニューヨークのイメージが付きまといます。このアルバムはまさにニューヨークオブニューヨークと私は思っています。ビリー・ジョエルは、次のアルバムで傑作ともいうべき「ニューヨーク52番街」を発表しますが、私が好きなニューヨークはこのアルバムで表現されるような哀愁のあるニューヨークです。

1.哀愁のニューヨーク

 このアルバムの哀愁を紐解いていくと、この頃のアメリカは経済が停滞し斜陽になりかかった時代。国としての制度疲労が顕著に表れたころです。

 そんなビリー・ジョエルの歌から浮き上がってくる人物像は、人生に疲れた中年男性。ニューヨークで生活することの厳しい現実を突きつけられながらもニューヨークは自分の心の故郷だと思う主人公がそこにいる。それはビリー・ジョエルそのものです。

 疲れたトレンチコート着て、ニューヨークの萎びたビルの片隅から夕日を浴びながら歩く哀愁漂う中年男。このアルバムを聞いているとそんな妄想に憑りつかれます。ビリー・ジョエルという作家の思いとはかけ離れていくようですが、音楽はリスナーが勝手に妄想するためにあるもの。妄想を楽しみましょう。



2.楽曲を聴きながら妄想する

 楽曲を聴きながら妄想しましょう。

  ビリー・ジョエルはニューヨークに移り住みます。(1. Moving out)。そして大人の街ニューヨークで生きる厳しさの洗礼を受けて、そんな気持ちを(2.Stranger)で訴えます。その厳しい生活の中で彼の心を癒してくれる華凜な花である女性がそばにいる。(3.Just the way you are)。イタリアンレストランで粋なニューヨーカーとのひと時を楽しむ(4.Scened from an Intalian restraurant)。ここまで聴いたら、まさにニューヨーク感がひしひしと迫ってきます。

 B面に移るとビリー・ジョエル得意のくどいというか説教臭さが前面に出てきます。まず、忙しさにかまけて無意味に流されていく日々の生活に対してこれでいいのかと自問自答する(5.Vienna)。さらに世の中そんなきれいごとでは生きられないよと訴えて(6.Only the good die young)、そんな苦闘の中に、心通わす彼女への気持ちをダイレクトに表した(7.She's always a woman)。そして、ビリー・ジョエルの野心が際立つ(8.Get it right the first time)でチャンスのつかみ方を訴えて、最後は大好きなニューヨークでなんとかのし上がろうと(9.everybody has a dream)で締めくくる。しかし、心の中はいつもストレンジャーである言わんばかりにリプライズが流れる。

 後半は説教がましい歌詞が多いのですが、これがニューヨークの哀愁と疲れた中年男性に重ね合わせるとなんといえない味わいに変わってきます。

 このように自分勝手な素晴らしい妄想ですが、こんな感じで聴くとニューヨーク感いっぱいな気持ちでこのアルバムを楽しむことができます。

3.ストレンジャーの頃のビリー・ジョエル

 ビリー・ジョエルはこのストレンジャーでスターダムにのし上がります。しかし、それまで長い下積みの時代があります。自分の実力とミュージシャンとしての評価が長い間乖離していて、そんな長い期間の葛藤がこのアルバムに滲み出ています。そういった屈折したビリー・ジョエルの感情と斜陽に差し掛かった米国民の感情が重なり合ったこと、さらに、フィル・ラモーンのプロデュースでジャズトーンのおしゃれなニューヨークテイストのサウンドに彩られたことが、このアルバムをメガヒットに導いたと言えるでしょう。

 私はビリー・ジョエルの楽曲については、このアルバムと名曲「A Newyork State of mind」だけしか聴きません。ちょっと哀愁漂うニューヨークが好きなのです。それが私の稚拙な妄想心を駆り立てます。

私も、トレンチコートを着て哀愁を漂わせながらニューヨークの暗そうな街を歩いてみたいものです。

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