(ドラマ/映画であの時代にgo!)高度成長期の憧れの大学生活:若大将シリーズ

 加山雄三と言えば若大将シリーズ。1960年代後半の若者を興奮させた青春映画で、映画でははち切れんばかりの若さが凝縮されています。加山雄三演じる田沼雄一が誰もが理想とするようなカレッジライフを見せつけてくれます。まるで米国アイビーリーグ学生の日本版と言うようなハイソ感で。この映画を見て、東京の大學生活に憧れて上京した人も少なからずいるはずです。

1.都会的なお坊ちゃま集団

加山雄三の演じる田沼雄一は銀座の老舗すき焼き屋「たの久」の跡取り息子です。どうみても、この時点でお坊ちゃま感が前面にでています。東京のど真ん中に自分の店や家があるというのはタワマンなど比べ物にならないステータスです。店を畳んでも不動産賃貸で十分に食べていけそうで主人公の設定レベルが高すぎるように思われますが。

そして田沼雄一の設定は、ちょっとやんちゃだが歌は上手く、スポーツ万能。そして端正な容姿で女の子にはモテモテの大学生。この人、どうしようもないほど恵まれた人です。それと対照なのが田中邦衛の青大将。これまた大企業の社長のドラ息子役で軽薄で女好き。舌っ足らずな喋り方がなんとも言えない味をかもし出しています。その周りの学生も中流家庭出身っぽく、貧乏学生であっても泥臭さはありません。このようなキャスティングを考えると、スポーツが盛んで育ちの良さそうなご子息が通う大学となり、実際当てはめると慶応、立教、成蹊などになるのでしょう。でも雰囲気的には早慶戦みたいなライバル校との試合もあり、慶応色が強い感じでもあります。私は、個人的には若大将より青大将の方が好きで、こういう友達が大学時代にいたら即、友達なりますね。見ているだけでも面白い。そういう点ではこの映画になくてはならない配役です。


2.お決まりのストーリー展開

映画のストーリーの組み立ては非常単純で、田沼雄一は京南大学のスポーツ部に所属し、スポーツ万能なリーダー格。ギターも得意で、時折Partyなどでバンド演奏や上手な歌を披露する。田沼雄一は、綺麗な女友達と出会う度に女性から好意を持たれる。そんな田沼雄一がふとしたことからヒロイン(星由里子)と出会い、お互いに好感をもつ。青大将の田中邦衛もヒロインを気に入りアタックするが相手にされない。しかし、若大将が他に綺麗な女子にモテすぎる事に嫉妬し、ヒロインはあてつけに青大将に近づく。そうしているうちにスポーツ大会、それも大抵は全国大会を舞台に、若大将の活躍で優勝する。ヒロインとのわだかまりも溶けて、二人はハッピーエンドになるというお決まりのストーリーです。

この映画シリーズでは、こういった展開を、スポーツをスキー、アメフト、駅伝ように変えて。映画の舞台も都会、ハワイ、高原、海などとそれぞれのロケーションにして、毎回同じようなストーリーを展開させていきます。

3.高度成長時代の若者に向けた夢物語

田沼のバンドが演奏するダンスパーティ、スポーツ部の合宿シーンなど、その当時の学生から見たら夢のような大学生活がそこには描かれています。京南大学はどう見てもお坊ちゃま大学です。そう考えると、この映画に憧れて上京した大学生が、男だけのバンカラ大学や国立大学に通い、アルバイトしながら安アパートで下宿生活し、まわりも同じような仲間と4畳半の部屋で酒を飲みかわすしかない現実に出くわしながら、この映画を見て実現不可能なファンタジーに浸っていたのでしょう。

 どちらにしろ、この映画には高度成長期の人々の夢が内包されているし、今と違って日本が青春だったころの映画です。

 


4.映像からにじみ出てくる主演女優のオーラ

この頃の女優は、なんていうか、純粋に女の子、女の子をしています。そういえば加山雄三の田沼も男らしい。この頃の女性は、こういう男らしく、自分を引っ張ってくれるような人がモテたのでしょう。これは私と正反対です。

 でも、映像からにじみ出る主演クラスの女優にはオーラがあります。容姿云々ではなく何かが周りと違う貫禄があるのです、そう思うと今の女優は下野しているような気がしなくもありません。圧倒的なオーラのある女優は少なく、美しいお姉さん止まりです。そう考えると女性の美しさというのは年輪を重ねるうちに貫禄に変わり、それは男でいう任侠の男気に通じる強さになります。

5.二度と戻ってこない時代

 少子高齢化で日本が内向きになっている今日から見ると、この映画が上映された1960年代後半は、日本がもっとも夢のあった時代であることが分ります。高度成長期の末期で、GDPで世界第二位に伺う時の日本が一番輝いていた頃です。これを米国に当てはめれば50年代のオールディーズに通じるものがあります。しかし、若大将に描かれている夢物語は、その20年後にバブル景気で実現されます。小金持ちの大学生は、高級車に綺麗な女子大生を乗せて、長野の高原などの小ぎれいなロッジに宿泊し、夜はキャンプハイヤーで昼はテニスなどの合宿を当たり前にするようになります。この映画はそんな躁を先取りした映画でもあります。しかし、一般の人々の生活はもっと質素です。70年代になり高度成長期が終焉し、ベトナム戦争で米国が疲弊し反戦ムーブメントが起きると、日本の若者も等身大の生活感漂うフォーク文化が主流になり、バンカラ大学生や国立大学生の4畳半生活が映画やドラマなどで前面に出てきます。



どっちの時代が良いのかは分かりませんが。かぐや姫の神田川のような世界観より、私は若大将のような躁を感じさせる世界観が好きです。

コメント

このブログの人気の投稿

(ファンタジー探訪:ホテル編)JR東海ツアーズのパックツアーで楽しむ:オリエンタルホテル栄

(ファンタジー探訪:ホテル編)高級ホテルから横浜港眺める ハイアットリージェンシー横浜

(ファンタジー探訪:ホテル編)JR東海ツアーズのパックツアーを楽しむ:ユニゾイン大阪北浜

(ファンタジー探訪:ホテル編)梅田の歓楽街近くのデザイナーズホテル:ホリックホテル

クアラルンプールの日常(小説)