(ドラマ/映画であの時代にgo!)石原裕次郎「嵐を呼ぶ男」で戦後ジャズブームを疑似体験

 ご存知、石原裕次郎の代表作「嵐を呼ぶ男」。私がこの作品を取り上げたのは昭和32年の戦後復興した東京をカラー映像で見れるからです。こういった映画のような場所が今の東京にあるのなら、是非とも行ってみたい、そんな気持ちにさせられます。

1.戦後のジャズブーム

 戦後直後の日本では、ジャズが一代ブームを起こしました。正直いって、ジャズが日本の大衆文化の主役になるほど溶け込める音楽とは思っていません。しかし、この時代はジャズが大衆音楽の主役になりました。それは、GHQによる日本統治と朝鮮動乱が関係しているからです。前者は、米国が占領統治国として戦後日本に様々なアメリカ文化が流しこんだこと。後者は、朝鮮戦争で多くの米国兵士が日本に駐在したことから、彼らに娯楽を与えるためのジャズミュージシャンが必要だったこと。そういったミュージシャンが日本の大衆音楽に紐づいてブームを起こしたことです。実際、朝鮮動乱が収束したあと、ジャズは下火になり、これらジャズミュージシャンは日本歌謡界に進出し、それぞれの分野で一流になっていきます。今では演歌系やお笑いに属される人たちも元を辿ればジャズミュージシャンだったり、米国駐屯地の専属歌手だったりしています。

 石原裕次郎の代表作「嵐を呼ぶ男」は、こういったジャズが一番輝いていた頃を題材にした映画でもあります。

 GHQが統治しなければ、ジャズは一部のインテリや音楽好きに支持されるだけの音楽にすぎなかったのです。今時点でも、そういう扱いでしょう。そういう事を考えると、戦後直後のジャズブームは、ブームと言っても異端です。占領統治国の立場でアメリカの文化を官製として持ち込んでいるのです。実際、朝鮮動乱が収束し、GHQも撤退すると、それ以降はアメリカ音楽の影響を受けながらも日本独自の音楽の発展の仕方に遷移していきます。その極みがJ-POPです。

2.嵐を呼ぶ男とその時代

 今でも終戦直後の日本復興を流す時、ジャズとか東京ブギウギなどの音楽がバックに流れます。そして、これら明るい音楽が戦前日本の暗い雰囲気と好対照をなすように演出しまています。

 そんな時代のジャズバンドの雰囲気をこの映画で堪能できます。しかし、この数年後には日本にはロカビリーブームが起きて、ジャズは下火になり、さらにビートルズ、そしてフォークと時代の流れは、非情に短いサイクルで移り変わっていきます。

 もうひとつのこの映画の魅力は、福島美弥子(北原三枝)の演じるキャリアウーマン像です。こういうやり手で気が強い女性の役は今の時代は、どうってことはないですが。この時代の女性像としては非常に斬新で、先端をいっている感があります。

3.戦後日本の時代感

その頃の時代感を感じさせる点を以下に羅列します。

①ドラマーの脚光

ドラマーがこれだけ脚光を浴びるのも、今の時代だと想像がつかないかもしれません。でも、ドラムソロで奏でるドラムの音は格好いいですね。ズシンと心の奥に染み込みます。今となっては、ドラムソロなどめったに聴くことができません。ドラムは機械音で代替しているバンドも少なくありません。今やバンドの中でドラムは脇役です。決して、映画を盛り上げるためにドラマーを持ち上げているのではありません。この時代はドラマーがバンドの主役になることも珍しくなかったのです。

喧嘩シーン。

 酒場での喧嘩シーン。この時代の映画は喧嘩が好きですね。この辺も時代の違いを感じます。今の時代ならそんな酒場に誰も近寄らなくなるような気がします。怖くていけません。私は気が弱いので。

 国分正一は気は優しいけど荒くれ者。喧嘩ばかりしている。そんな設定も今の映画では絶滅危惧種です。喧嘩に明け暮れる毎日という設定も昭和の匂いがプンプンです。

②JAZZの演奏会場

ダンスホールみたいな会場での演奏。昭和にはこういう演奏会場があったのですね。でも映画のような小さなダンスホールでジャズを聴きたいです。それとディナー会場での演奏。昭和を感じさせます。お客は自分たちの会話を楽しみ、JAZZミュージシャンは、バックミュージックとして演奏している。映画の中で「アベック相手に演奏できるか」という下りがあるので、ムードミュージックを演奏していたのではないでしょうか。たぶん。

 そんなところで夕食を食べてみたいですね。カウンターでジャズを聴きながらウィスキーを飲む。いいですね。でも、こういった場所も令和では絶滅危惧種です。

そして、バンドマンの待合室。昭和ですね。なんか学校の部活部屋かと思われるような雰囲気。昭和感満載です。

 


③国分の住んでいるアパートと福島の豪邸

 バラック丸出しです。でも、そんなアパートにピアノがあるなんて、近所迷惑にならないのかな~。そして、その当時に音楽大学に通っているって、結構お金がありますね。母親しかだけの収入でどうやって学費を払っているので?そういうことは度外視しましょう。映画ですので。

 あと北原三枝の自宅も、今でいう豪邸なんでしょう。庶民の憧れです。そんな光景をみているだけでもなんか楽しくも感じます。

 




④石原裕次郎と北原三枝

石原裕次郎は、役柄関係なく育ちの良さが滲みでています。不良だけど育ちからくる品の良さ。性格は純粋で他人の心が良くわかる優しさを持ちせています。それはその頃の人々の理想像を描かさせるには十分な位です。

 映画に出てくる石原裕次郎の容姿も格好いですね。おそらくですが、容姿と言う面では、この頃の彼が一番輝いていたのではないでしょうか。戦後復興期ということもありますが、時代がエネルギッシュなキャラクターを求めていたのでしょう。

 石原裕次郎のイメージは、後年の太陽にほえろなどのボスのイメージが強いのですが、こういった若い時のイメージももう少し強調されても良いのではと感じます。結構なイケメンです。

 北原三枝も素敵ですね。容姿的には、綾瀬はるかをちょっに古き良き日本の古風な女性のした感じです。この映画ではキャリアウーマンを上手に演じております。



この映画を見ている限り、石原裕次郎の育ちの良さから発する母性本能に対し、北原三枝の強さが裕次郎を上手に包み込む感が出ていて、お互いが補完し合える関係となっています。

⑤戦後の銀座の風景

 今は、銀座は大人の街です。銀座で遊ぶのは選ばれた人たちです。でもこの頃の銀座は若者が集うもっとカジュアルな街だったのでしょうか。そんな時代の銀座に行ってみたい。損気持ちにさせられます。そして、この映画を見て、都会にあこがれた若者が多かったのではないでしょうか。

4.時代の熱気 

あと、戦後の日本の好景気岩戸景気の雰囲気が充満しています。この映画は岩戸景気と重なっています。日本全体が、今日より明日、明日より明後日と未来が開けていくことを夢見ていた時代です。そんな活気がみなぎっています。

 こういった熱気は今の日本にはありません。都会の街も静かに上品になりました。とにかく、昔は、子供もよく外であそんでいたような。でも、いまの時代はそういう光景もあまり見かけません。それは街も同じです。どこも人通りが少ないです。

 まあ~、現代の若者は、そんな雰囲気を日本ではなく東南アジアに求め
ています。バンコクはそんな要求をかなえてくれる街の一つです。なので東南アジアの猥雑な雰囲気に魅了される日本人が少なくない気持ちが理解できます。


 


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